『校長室通信 (H20.12.26)

             総合学科高校が目指す教育
           〜新しい時代の高校教育のパイオニア〜
                    東京都立つばさ総合高等学校長(全国総合学科高等学校長協会理事長)荒川兼一

平成6年に全国で最初の総合学科高校が誕生して14年。その数は334校に増えた。文部科学省では将来、全国に500校(各学区に1校)の設置を目指している。
 昨年暮(平成19年)、経済協力開発機構(OECD)が世界の57カ国・地域の15歳を対象に実施した学習到達度調査(PISA)の結果を公表し、日本の高校生の学力低下が大きな話題になった。読解力、科学的応用力、数学的応用力の3分野を見る同調査は、義務教育終了段階の子供たちが、将来、社会に出たときに、知識や技能を活用して問題解決できる能力が身に付いているかどうかを重視している。また、調査からは、日本の子供たちの学ぶ楽しさや意欲度が低いことも明らかになった。
 これらの学力(課題解決型)や学習意欲については以前からの課題でもあった。その対応は平年3年、中央教育審議会の「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」の答申に始まる。いかに社会が変化しようと、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に行動し、解決する能力が求められる。そこで、将来の職業選択や人生設計を視野に入れたキャリア教育を柱にする総合学科高校が誕生した。偏差値に集約される一つの価値基準だけではない、生徒のさまざまな学力や能力を引き出し、自己の進路への自覚を深めることを目指した。幅広い選択科目を設置し、「生徒が楽しく、生き生きと、伸び伸びと、学習できる学校」を創るという大きな期待を担っていた。
 多くの総合学科高校は原則履修科目「産業社会と人間」を学び、体験学習や討論などを通して、職業観やコミュニケーション能力を養い、学習へのモチベーションを高めている。また、「総合的な学習の時間(課題研究)」を中心に課題解決能力やプレゼンテーション能力の育成、外部(地域)の教育力の活用などさまざまな教育活動を通して、多くの成果をあげてきた。
 キャリア教育と科目選択を通して身に付ける選択能力や進路への自覚は、総合学科の生命線ともいえる。教員にとって知識伝達型の授業に比べ、課題解決型の授業は手間暇が掛かる。生徒が自ら課題を見つけ、自ら解決するためには、教師による周到な準備があってこそ可能だ。総合学科の理念を生かした教育活動は試行錯誤の連続である。しかし、多くの調査から在校生のみならず保護者や卒業生からの評価は高い。
 総合学科高校は、新しい時代の高校教育のパイオニアとして、先輩方の熱い想いを継承し、学び合い、広く伝えていかねばならない。
 総合学科高校が“普通の学校”と言われる時代が来ることを願っています。
                                                  (「日本教育新聞」平成20年10月6日掲載)